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深夜三時、新月の闇夜が、山崎グループビルを包んでいた。
このビルは黒いフォルムのツインタワーで、中腹と、最上階辺りにアーチがあり二つのビルを繋げていた。
「‥‥寒気がする」
ネイトがつぶやく。
[‥‥僕もします]
無線越しに、レティンが相槌を打つ。
[そうか?涼しいし、ちょうどいいけどな]
次に無線から声がしたのはクローゼだった。
ネイト、高来、フォルニーアの三人は、山崎グループ西側ビルの非常用裏口の前に、
無線の向こうでは、クローゼ、レティンの二人が、東側ビル正面玄関で任務開始を待っていた。
「いや‥そうじゃなくて、なんか噂されてるような」
少し暗い声音でネイトが言と、
[‥‥‥僕は普通に寒いです]
レティンがぽつりと呟く。
季節は冬に入り、レティンの言うとおり、吐く息が白くなるほどに東京の夜は冷え込んでいた。
そんな中で、パーカー二枚に、ウインドブレイカーを重ね着したレティンと、タンクトップ一枚のクローゼは、お互いの服装を眺めながら、言い争っていた。
[寒いってその格好でか]
[はい‥‥。クローゼさん。よくそんな格好で生きてますね]
[お前に言われたくはない]
[僕は季節的に普通だと思うんですが‥‥]
[七月から同じ格好しててもか?つか季節的の前に、ファッションとして少しおかしくねぇか?]
気の抜けた話をする二人に、嫌気のさしたフォルニーアがコートの襟に付いた無線をカチッと鳴らし、無線で話す二人に言う。
「おい。わざわざ無線で与太話をするな。クローゼ、レティン」
すると、カチッという音とともに二人の声は途絶えた。
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