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「はい‥‥そうです。‥‥ええ、それとここからは電話は出来ないかと‥‥お願いします」
高来は早口で用件を済まし、電話をきった。
「ここからは隠密行動なので、よろしくお願いしますよ。電源は切っといてください」
ふっと笑いながら、ネイトは言った。
「ご‥ごめんなさい」
高来は恐縮していた。
そんな高来の肩に手をおき、ネイトは言った。
「それでは改めて、行きますか」
気を取り直し、高来が、ええ、と言ったとき、またも携帯の着信音が鳴った。
「と、電話だ」
次はネイトの携帯が鳴ったのだ。
「‥‥‥」
「‥‥‥ったく緊張が無さすぎる」
高来はただ茫然とし、フォルニーアは片手で頭を抱えていた。
「油断してるとフォルさんにも電話がくるよ」
嘲笑うかのようにネイトは言ったが、フォルニーアは腕を組みながら言った。
「ケータイは店に置いてきたよ」
当然だ。
と言いたげな言い方だった。
ネイト達のいる裏口は黒い鉄製の扉で出来ており、通常の鍵とパスワード認証のダブルロックで閉じられている。
その扉の鍵をカチャカチャとピッキングツールを操り、手慣れた手つきでネイトは開けようとしていた。
「ピッキングは久しぶりだな」
「裏口‥‥ネイトにしては地味なやり方じゃないか」
フォルニーアがからかうように言う。
すると、ネイトはカギに向かいながら、不適な笑みを見せた。
「派手なことはあとでやるよ。フォルさん」
高来は、ネイトが言った“派手なこと”について詳しく聞きたかったが、ネイトはもったいぶるようにそれ以上は話さなかった。
「よし、開いた。ロア、お前の出番だ」
カギを外し、パスワード認証装置にUSBケーブルを差し込み、それにつなげた自分のノートパソコンをカタカタと素早く打つ。
そしてそれをロアのパソコンにリンクした。
[おいさ、ハッキング開始!]
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