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部屋の中の会話は高来が聞いているとは知らず、淡々と進んでいった。
「いいのか?」
「ええ、そろそろが時期だと思ってましたし」
「そうか、そんで?」
「一週間以内に実行したいと思います」
「情報は揃ったのか?」
「いえまだ、でも時間の問題ですね」
「わかった、俺の部下はビルに待機させておこう」
「ありがとうございます」
「心してかかれよ、なんたって敵はあの山崎グループだからな」
高来ははっとした。
山崎グループとは、今日本で三本の指に入る大企業である。
その大企業が敵とはどういうことなのか。
「わかってます。いつものようにいくとは思ってません。」
「お前の怪盗団だけでできるのか?」
高来の興味をさらに引く言葉だった。
(‥‥‥怪盗団?)
今にもこのドアをブチ破ってはいっていきたいところだが、必死に堪えた。
さらに二人の会話は続く。
「‥‥高来はどうするんだ?」
(私!?)
高来は小さく悲鳴を上げてしまったが、幸にも、中の二人は気付いていないようだ。
「今回も言わないほうがいいですよ、あの人はすぐに無茶をする。それ以前に知らない方がいいですよ、いくら犯人逮捕のためとはいえ‥‥‥」
もう我慢などしなかった。
入っていこうか迷っていたが、犯人逮捕という言葉が高来にとって決定打になった。
扉をタックルするようにあけた。
あけてみてやっと気付いたが、扉に鍵は掛かっていなかった。
掛かっていたらおもいっきり跳ね返されていただろう。
中にいた二人は、わざとらしいほど驚いた顔をした。
「‥‥高来先輩‥?」
「高来‥‥‥どうした?」
「どうしたもこうしたもありません!」
高来は興奮しているのか、かなり息が荒かった。
「どういうことなんですか!山崎グループが敵とか、怪盗団と‥むぐっ」
彼女にしてはかなりあわてた大声ですべてをぶちまけるように話していたが最後まで続かなかった。
杉沢が瞬間移動のように動き、高来の口を塞いだのだ。
杉沢はその状態のまま手を伸ばして鍵を締め、ほっと息をつき、高来の口から手を外した。
「ハァッ‥‥ハァ‥‥ちょっ何するの杉沢君!」
またも大声で話しだす高来の頬は少し赤くなっていた。
落ち着かない高来を杉沢は自分の口元で人差し指をたて、静かにするよう促す。頼むから静かにしてくれ、という顔で‥‥。
仕方なく少し間を置いて呼吸を整え、声のトーンを下げて話しだす。
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