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不意に、
君の声が聴きたくなる。
【Call me!!】
本当に急に、しかもラジオの収録中なんかにアイツの声が聞きたくなった。
それでもラジオは続いている訳で。
「だから、俺は無実なんだって!!」
「中丸、ウザい……」
……慣れとは怖いものだ。
思考は完全にアイツにイッちゃってるのに、口は勝手に動いて中丸にツッコミを入れてたりする。
中丸も全然気づいていないようだし、俺って天才かも……。
なんとかラジオの収録を終わらせて、中丸と2人駄弁りながら楽屋に戻る。
その間も思考はアイツにイッちゃってて、なんだか落ち着かなかった。
「なんか今日の上田、そわそわしてんね」
不意に中丸がポツリと呟いた。
「え、そう?」
平静を装ってそう言ってはみたものの、鈍い中丸が気づくぐらいなのだから相当俺はそわそわしているらしい。
「うん。なんてゆうか、言葉では表しにくいんだけど……」
中丸は1人うーん…と唸っている。
そんな中丸の姿を見ていたら、隠しているのも面倒になって「そう。俺そわそわしてんの。だからもう帰るわ」そうにっこり微笑むでその場を後にした。
後ろで中丸がなんか叫んでた気がするけど、無視。
俺はいま、それどころじゃないのだ。
意識すれば意識するほどアイツの声が聴きたいという願望が強くなる。
楽屋に向かう俺の足は歩きから早足になり、最終的には走っていた。
楽屋に飛び込み、真っ先に机の上に置いてあるカバンの中を漁った。しかし目当てのものは見つからない。
苛つきながらも辺りを見回すと、メイク台の横に充電中のお目当てのもの。
それを手に取り、パカッと開く。そしてアイツの番号を呼び出そうとして手が止まった。
いや、アイツの声が聴きたいのは確かだ。
間違いなんてない。
だけどなんだろう……。
なんていうか。こう、モヤモヤした感じ。
そこで俺はピンと来た。
このモヤモヤした感じ……。
それはつまり、
〝今日の俺は素直すぎる〟
だってさぁ、こんなストレートな行動をこの俺がしていいわけ?
よくないでしょ。ぜんっぜんよくない。
こんなの〝上田竜也〟じゃねぇよ。
俺の中にピンとあることが浮かんだ。
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