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とりあえず、アイツの番号を呼び出して普通に電話を掛けた。
プルルル…プルルル…プルルル…
長いコール音の後に、アイツの声が聞こえた。
でもそれは録音された声で、無機質に流暢な英語で今は電話に出られないことを知らされる。
しかし俺は落ち込んでなんかいない。
これも計算の内だ。
流暢な英語の後ピー…という機械独特の音がした。それを合図に俺は電話口に向かって叫ぶ。
「Call me!!!!!!」
それだけ言って、電話を切った。
ふー…と清々しい気持ちで近くにあったパイプ椅子に腰かけると、メイク台の鏡越しに映るぽかんとした中丸のまぬけ顔と目が合った。
走ってきたのか息が乱れてる。
「中丸おじーちゃん、どーしたの?」
そんな中丸が面白くて声を掛けたら、一瞬ビクッとして慌てたように「何でもない!!」と手を振った。
ククッと喉の奥から笑いが溢れる。
俺は笑いを噛み殺しながら荷物を持って立ち上がった。
「じゃ、お先に」
「えっ、あっ じゃあ…」
キョドってる中丸の横をすり抜けて、楽屋を後にした。
閉まるドアの隙間から中丸が何か言ってたような気がするけど、無視。
俺はニヤけた顔が抑えられないまま、帰路についた。
END
おまけ→
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