211人が本棚に入れています
本棚に追加
口の中に広がる甘ったるい、
僕の初恋の味。
【いちごみるく】
「はーなーまーるせーんせっ」
次の授業教室へ向かうため廊下を歩いていると、語尾にハートマークがつかんばかりに名前を呼ばれた。
……若干名前が違っていた気がするが、いつものことなので気にせずスルー。
ゆっくりと振り返るとそこには最近の悩みの種がきらっきらの笑顔で立っていた。
1年E組 赤西仁
この名前を聞けばみんなあからさまに顔を歪めて呟く。
『あぁ〝あの〟赤西か……』
〝あの〟とはどういう意味か。
残念だがいい意味ではない。
〝あの赤西か〟の後には必ず〝また喧嘩をしたらしい〟とか〝授業をサボった〟だとか、いわゆる彼には〝不良〟のレッテルが貼られているのだ。
だからみんな名前を聞いただけで顔を歪める。
しかし、俺は彼を不良だなんて思ったこと一度もない。
人懐っこい笑顔や言動からは〝不良〟なんて言葉不釣り合いだ。
けれどそれは本当に気を許した人にしか見せない顔なのだと、赤西と仲の良い保険医の上田は言っていた。
さて、どうしてそんな彼が俺の悩みの種なのかというと、どうやら俺は彼に恋をしてしまったらしい。
……自分でも驚きだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!