いちごみるく

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実を言うと俺は今まで恋という恋をしたことがない。 学生時代に何度か告白されて〝なんとなく〟付き合うことはあったが。 だから戸惑っているのだ。 それはそれは切実に。 誰かに相談したいが、いい歳の男が恋の相談なんて……恥ずかしすぎる。ましてや相手は生徒で、おまけに男。 考えただけでため息しか出ない。 「せんせ、どうしたの?」 ボーッとしていた俺を不審に思ったのか軽く首を傾げる(無意識なのか上目遣い)赤西に、俺の心臓は破裂寸前だ。 「いや、えっと、な、なんでもない!そ、それよりも早く授業行けよ。お前単位やばいだろ」 「ぶはっ、せんせー何どもってんの!?」 何がそんなにおもしろいのか腹を抱えて笑う赤西。 そんな赤西の姿にもキュンとくるような俺は、もうすでに手遅れな気がする。 「いいから!!早く授業行け!」 照れを隠すために荒っぽく言えば、はいはいと気の無い返事が返ってきた。 ……絶対行く気ねーだろ。 じとーっとした目で赤西を見るが、本人は気づいてないのか気にしていないのか素知らぬ顔でポケットから飴を取り出した。 そして嬉しそうに口に放る。 そんな赤西の姿を見てはぁ、とひとつため息を吐く。 「なかまるせんせいも食べる??」 はいと言って差し出されたソレは、白いバックにピンクの文字で〝いちごみるく〟と書かれたものだった。 反射的に手を差し出しそれを受け取ると、赤西の顔に花が綻んだような笑顔が浮かぶ。 「あかにし、────」 その時、2人だけの廊下にチャイムの音が響き渡った。 .
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