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「……そんじゃおれ行くね。せんせーも授業頑張って」
チャイムが鳴り終わるのと同時に赤西はそう言って踵を返した。
少しダルそうに歩く後ろ姿をしばらく見つめ、はっとして慌てて教室へ向かう。
手にいちごみるく味の飴を握りしめて。
* * * *
遅れたことに散々文句を言われつつ授業を終え、職員室へ向かう途中で先ほどの飴を口に放り込んだ。
瞬間、口の中に広がるいちごみるく独特の甘ったる味。
しかし、何故かほんの少しだけ苦味が混ざってる気がした。
───保健室にて
「ねぇたっちゃん!おれどーしよ!なかまるせんせーに飴あげちゃった!」
「あっそう。良かったね」
「それでね、それでね。授業ちゃんと出ろって言われて、なかまるせんせーおれの単位がヤバいこと気づいてんの!!なんかおれのこと気にしてくれてるみたいでさー……」
そこにはノロケ話を延々と聞かされる保険医の姿があった。
(さっさとどっちか告ればいいのに)
保険医の呟きは、誰にも知られることはない。
END
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