さよならの準備はもう出来ていた。

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不思議と、涙は出なかった。 本当は気付いていたのだ。 かめが、俺以外の〝誰か〟を見ていたことくらい。 もともと、俺たちの関係は恋人なんて甘いものじゃなかった。身体だけの関係。所謂セフレ。 始まりは何年か前。 メンバーで集まって飲んだ後に、まだ足りない気がして〝たまたま〟かめを誘った。 そこからはお互いお酒も入っていて、長いこと彼女もいなくて……。って感じで軽いノリでそうゆう関係になってしまった。 最初は俺も割り切っていたし、かめを好きになるなんてこれっぽっちも思っていなかった。実際、彼女もそれなりに作っていたし。 けれど何故かこの関係を終わらすことが出来なかった。 そしていつのまにか、自分でも気付かないうちにかめのことを恋愛対象として好きになってしまっていた。 自分の気持ちを自覚してからは、こんな関係早く終わらせるべきだと何度も思った。 本気になる前に。早く終わらせなくてはと。 でも、別れを自分から切り出す勇気なんてなくて。 もう一回、あと一回、そんな風に自分に言い訳をして別れを先伸ばしにしていた。 その結果がこれだ。 好きになった相手は自分の親友と結ばれましたとさ。 自分が惨めすぎて笑えてくる。 「はは、ほんと、ダサ……。ベタな恋愛ドラマみたいじゃん、」 冷たくなったベッドの中。 一人シーツにくるまって、自嘲的な笑みが溢れる。 ポツリと、枕の上に雫が落ちた。 END (さよならの準備は もう出来ていたはずなのに、) (どうして涙が止まらないのだろう)
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