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貴方の存在が、
僕の世界を一瞬で変えてしまった。
【The changing world】
「あっ、」
頬に当たる雫を感じて空を見上げれば、曇天の空からはポツポツと雨が降っていた。
俺は自然と笑みが浮かぶ。
だいたいの人は雨が嫌いと言うけれど、俺はそうでもない。むしろ〝好き〟の部類に入る。
だって雨の降る日は……
あの人と出逢えた日だから。
あの人と出逢っていなければ、きっと俺は今ここにいないと思う。
あの人に出逢っていなければ…………。
あの頃の俺は、生きる意味も 死ぬ意味も 何もわかっていなかった。
別に死にたい訳ではないけれど、特別生きたい訳でもない。
言うなれば〝無〟
真っ白 あるいは モノクロの〝無〟の世界。
そんな世界に俺はいた。
ある雨の降る日。
俺は特にすることも無く、フラフラと街を歩いていた。
傘をさす気にはなれなくて、ポケットの中には財布とケータイ。殆ど手ぶらだった。
ガシャーン
不意に後方で〝何か〟が落ちる音。それから人の悲鳴が聞こえた。
俺は何の気なしに振り返る。
すると人だかりが出来ていた。
「おい、大丈夫か!?しっかりしろ!!」
「救急車……。誰か救急車を呼んで!!」
「自殺だよ、自殺。きっとこのビルの屋上から飛び降りたんだ」
人々の声の波によって聞こえてきた会話。
俺は何故か、〝自殺〟という言葉にとても魅力を感じていた。
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