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泣きながら叫んで叔母さん家のドアを叩いた。
自分でも何を叫んでるのか分からない。
叔母さんはパジャマに軽い上着を羽織って出てきた。
「どうしたの?光ちゃん?」
「大きい熊みたいのが、お父さんとお母さんを……助けて!」
泣き叫びながら何を言って説明すればいいのか分かんない。
叔母さんは、何かを察したのか家から携帯と数珠を手にして私の手を取り家へ向かった。
リビングの電気は壊されていたのでキッチンの小さな明かりを付けた。
テレビの光で見た光景に色を付けた。
どす黒い血の海。倒れてる二人の洋服。
さっきはよく見えなかった引っ掛かれた傷が見えた。
二人とも首にさっきの長い爪でつけられた様な刺し傷があった。
引っ掛かれたんじゃない刺したんだ。
私は泣き疲れた顔で熊が音もなく逃げていった庭の方に行った。
大きな窓枠が丸ごと取れて庭に倒れてる。ガラスも粉々。
叔母さんは床からひとつまみの毛を拾ってた。
「何それ?熊の毛?」
私は自分でも驚くくらい冷めた声で叔母さんに聞いた。
「これは、熊じゃないわ。……多分、鼠よ……」叔母さんは小さく答えた。
「何で、こんな……明お姉ちゃんが、何でこんなのに……」
叔母さんの声は震えてた。
叔母さんは数珠を握りお母さんの側へ行って手を取った、明お姉ちゃん。と小さく呟いた。
その後は、パトカーや救急車が来て近所の野次馬も来て家の前は大変な事になっていた。
私は毛布にくるまれながら叔母さんと一緒に救急車に乗った。
首にかけていた石は真っ黒に戻っていた。
私は昨日十才になったばかりだった。
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