第二章・アルバイト

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「量より質か……。まぁ、お前は明(アキラ)に似て勘が鋭いから急がなくてもいいと思うがな……」 お爺様は、少し寂しげに笑った。 「おっと、そうだ。そろそろ薬も切れる頃だろう。帰りに受付で貰って行きなさい」 私は、は~い。と返事しながら携帯をポケットに入れ部屋を出た。 受付には冴子(サエコ)さんがいた。感情を表さない動作や声。さっきのインターホンの声主でもある。 ありがとう。とお礼を言い薬の袋を受けとる。 「はい」 ……相変わらず感情が見えない。 建物を出て地下の駐輪場へ向かいながら携帯で時間を見る。 「まだ五時半か……」 叔母さんの家に七時まで帰るのが一応、門限。 毎日、一緒に夕食を食べる事を約束して、高校生になってから一人暮らしを許された。 叔母さんの家の斜め前に私の家がある。両親がいた時は少し大きめの一軒家で庭もあった。 今は、二階建てのワンルームアパートになっている。その中のひとつがメゾネットタイプになってて、私のために叔母さんが作っておいてくれた部屋がある。 約五年間、誰も住んでなかったけど叔母さんがいつでも住める様にガス、水道、電気、掃除など全部やっておいてくれていた。 テレビ、洗濯機、冷蔵庫、パソコン、ベッドなど最低限必要なものを揃えて今年の春から住んでいる。 ……後、同居人もいる。 人では無いので同居猫だ。
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