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六月の終わり。
東京の街は未だに梅雨前線の真っ只中にあった。
少女の耳の奥でもザァザァと五月蝿い雨音が執拗に木霊している。
空高くに広がる黒い雲から落下してきた雨の雫は、アスファルトに堕ちて次々に弾けていく。
弾けた雫は集積され、やがて水溜まりとなって梅天のみを虚しく映す。
「――こと……。まこと……真琴ぉ…………!!」
雨音に混じって、自らの名前を必死に呼ぶ聞き慣れた声が、少女の聴神経をくすぐった。
意識をそちらの方に向けてみる。
漆黒の装束を身に纏った女性が、白くて大きな箱にすがりついて、すっかり枯れきってしまった喉を裂かんとばかりに慟哭していた。
その肩を優しく抱く、女性と同じく黒づくめの男性。
周りにいる大勢の人々も、揃って白黒姿で涙を流している。
その全ては、透明なフィルターを一枚隔てて見る景色。
少女には到底干渉できない、交わることの無いであろう世界――――。
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