参『』

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小窓から差し込む朝の光の眩しさと雀の鳴き声で、真琴は目を覚ました。 今の季節は神無月の末なので、だいぶ肌寒い。 それでもおつねから貰った綿入り半纏が夜の冷たさから身を守っていてくれたので、そこそこ快適な朝と言える。 布団を部屋の隅に畳んでから、寝ぼけた頭でしばらくうとうととしていると、障子戸の向こうから「真琴さん」と声が聞こえた。おつねだ。 「おはようございます。着付けのお手伝いに参りました」 「おはようございます。どうぞお入りください」 すぐに障子戸は開いて、大きな風呂敷を持ったおつねが室内に入ってきた。 「わざわざすみません」 「いいえ。お気になさらずに」 結び目を解いて風呂敷を広げると、中には冬物の着物一式が綺麗に畳まれて入っていた。 まずは襦袢という和服用の肌着を着て、その上に小紋と呼ばれるごく一般的な着物を着る。 今日は手順を見ているだけでいいと言われたので、真琴は網膜に焼き付けるつもりで一連の動きをじっと眺めていた。 が、しかし。あまりに複雑すぎてなかなか覚えられそうにもない。 稽古で胴着を着ることはしょっちゅうだったが、それとは全く勝手が違う。 いくつも帯紐を使って、崩れないように丁寧に形作っていくのだ。 着物はある意味芸術とも言えよう。 四季折々の装いは、それだけで人の目を楽しませる。 「着付けの方はこれでお仕舞いです」 最後に袋帯の形を整えて、おつねは真琴に告げた。 あとは、髪だ。 腰まであるこの黒髪を結うのにはかなりの時間を要するだろう。 おつねは櫛と髪紐と簪を取り出して、ただまとめるだけの簡易的な結い髪を完成させた。 何処に外出するわけでもないだろうから、このくらいで十分だろう。 「おつねさん、ありがとうございました」 「よくお似合いですよ」 「そっ、そんな……よしてください」 世辞を言われたのだと思って顔を俯ける真琴だったが、おつねの言う通り着物も髪もなかなかよく似合っていた。 これを道場の男衆が見たら、何と言うだろうか。 おつねは袖で口元を隠して、クスッと笑みを溢した。
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