参『』

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おつねはたまを背負っているため、負担をかけないようにと配膳は真琴が済ませた。 周斎だけは普段から自室で食事を採るため、広間に運ぶ分とは別にして配膳した。 時刻は辰の刻(午前八時)。道場の他の面々も身支度を終えているだろう。 まず一番始めに広間に入ってきたのは沖田だった。 あくび混じりに「おはようございまーす」と間延びした声で朝の挨拶をすると、迷うことなく近藤が座る場所の隣に腰を下ろした。 次に土方、近藤と続いてやってくる。 「お、今朝の飯は真琴くんも手伝ったのか?」 「ええ。それほど大したことはしていませんが」 「いやいや、十分ありがたいぞ!」 近藤に誉められて嬉しかったのか、真琴は頬を赤らめた。 「朝稽古のおかげでお腹が空いて死にそうです……。食べても良いですかー?」 「総司、待て」 「えーっ」 「他の奴らがまだ揃ってないだろうが」 土方沖田組は近藤を真ん中に挟んだまま、飼い主と飼い犬のようなやり取りを行っていた。言うまでもないが、土方が飼い主側で沖田が飼い犬側である。 出された膳はあと三つ余っている。 つまりこれから三人が、この場にやってくるということだ。 ――ん?確か、試衛館の食客ってもう少しいたような気がするんだけど……? 真琴は不思議に思ったが、膳が少ないのは仕様である。 何故なら、昨晩から江戸の町に遊びに出ている人間が若干二名ほどいるからである。 「ねぇねぇねぇ!ぱっつぁんと左之さんがどこにもいないんだけど!!」 勢い良く障子戸が開いて、色白で背丈の低い少年が大声で文句を言いながら入ってきた。 「原田と永倉の二人なら、飲みに行ったっきりだぜ。まだしばらく帰ってこないんじゃねぇか?」 「お、俺だけ置いてけぼりかよ……!」 少年は露骨に肩を落として仲間外れにされたことを恨んだ。 ――えっと、もしかしてこの人って……。 童顔なのも相俟って子供にしか見えない彼の姿に、真琴は新選組の最年少幹部の名を思い浮かべた。 いかにも、彼が後の新選組八番隊組長となる藤堂平助である。 藤堂はむっとした顔のまま自らの膳の前に腰を下ろして、そこでやっと見慣れない少女の存在に気付いた。 パチパチと目を数回瞬かせる藤堂。 「……えっ、誰!?」 あまりにベタすぎるその反応に、沖田が肩を震わせてクスクスと笑った。
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