参『』

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「大丈夫ですか?起きられますか?」 真琴は永倉の肩を揺すって呼び掛ける。 永倉からの返事は無い。 「困りましたね。これでは風邪をひいてしまいます」 「……仕方ねぇなぁ」 すっかり意識を飛ばしてしまっている永倉を見下ろして、土方が溜め息を吐いた。 筋肉質で体格の良い永倉を運ぶのは、細身な土方にとってはけっこうな重労働だ。 永倉の脇の下に手を入れて、抱え起こす。 酒の匂いが鼻をついた。 「土方さん、あんたじゃきついだろ。新八なら俺が連れて行くよ」 苦戦する土方を見かねた原田が声をかける。 「酔いどれのくせに何言ってんだ」 「さっきの拳骨のおかげでだいぶ醒めちまったさ。ほら、そのデカブツ寄越してくれ」 そう言ってしゃがみこんで土方に背中を向ける。 土方は「途中で落とすなよ」と年を押して、原田に永倉を背負わせる。 本調子ではないせいか足元が少し覚束ない気もするが、どうにか運べそうだ。 途中、原田が立ち止まって一度振り返った。 「そうそう。えーっと、……ねえちゃん名前は?」 「桜木真琴です」 「なるほどな。真琴ちゃん、もしだったら後で新八んとこに水持っていってやってくれねえか?」 「はい、わかりました」 「ありがとよ。起きねぇようだったらぶっかけていいぜ。俺が許す」 原田はそう言って白い歯を見せて笑い、永倉を背負い直してふらふらと屋敷の中へ入って行った。 「……仲良しなんですね」 「馬鹿は馬鹿同士で何かと波長が合うんだろ。なんつったって試衛館道場の“三馬鹿”だからな」 「三馬鹿?」 聞けば、原田、永倉、そして藤堂の三人は酒と祭りが大好きでいつでも賑やかなのだという。 そのおかげで道場もだいぶ活気が付くのだが、先程のように遊び歩いて飲んだくれて他の面々が迷惑を被ることもしばしば。 以前は飲み屋の主人が直々に溜まりに溜まったツケを徴収しにやってきた。普段は温厚な近藤も、その時ばかりは三人に喝を入れたらしい。 土方の苦労話に真琴は相槌を打ちながら、「でも、気の良い人達なんですね」とくすくす笑みを溢した。
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