2.君との出会い

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「お願い!これは出張代だと思って!」 「んな、無茶な…」 「お願いしますっ!」 そう言うと彼女は俺の前で深々と頭を下げた。 人に頭を下げられるなんてあまり気持ちのいいものではない。 ましてや街中だ。 行き交う人々がジロジロとこっちを見て、通り過ぎて行く。 「わっ…分かった!分かったから顔を上げてくれ!!」 慌てた俺はとっさに、このとんでもない頼みを引き受けてしまっていた。 「ホント?いーのっ!?」 顔を上げた彼女は、心から嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。 「ただし、しばらくの間だけだからな!それと、金はいらないから!」 俺は少し乱暴に貰ったお札を、彼女のコートのポケットにねじ込む。 「うん、嬉しいっ!ありがとう!」 まぁこれだけ俺の歌を気に入ってくれてる事だし、別にいいか。 少しの間歌いに来る位なら。 その笑顔を見てすっかり毒気を抜かれた俺は さっき初めて会ったばかりの、少し風変わりな美少女、日野沙雪のペースに巻き込まれていた。
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