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「お願い!これは出張代だと思って!」
「んな、無茶な…」
「お願いしますっ!」
そう言うと彼女は俺の前で深々と頭を下げた。
人に頭を下げられるなんてあまり気持ちのいいものではない。
ましてや街中だ。
行き交う人々がジロジロとこっちを見て、通り過ぎて行く。
「わっ…分かった!分かったから顔を上げてくれ!!」
慌てた俺はとっさに、このとんでもない頼みを引き受けてしまっていた。
「ホント?いーのっ!?」
顔を上げた彼女は、心から嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
「ただし、しばらくの間だけだからな!それと、金はいらないから!」
俺は少し乱暴に貰ったお札を、彼女のコートのポケットにねじ込む。
「うん、嬉しいっ!ありがとう!」
まぁこれだけ俺の歌を気に入ってくれてる事だし、別にいいか。
少しの間歌いに来る位なら。
その笑顔を見てすっかり毒気を抜かれた俺は
さっき初めて会ったばかりの、少し風変わりな美少女、日野沙雪のペースに巻き込まれていた。
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