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俺の顔色が一瞬にして変わったのが、沙雪にも分かったのだろう。
ふふっと笑うと、イタズラっぽく言う。
「図星ー?」
「…………」
何も答えられない俺。
しょうがないなぁといった風に溜め息をつくと、今まで目の前にしゃがみこんでいた沙雪が、立ち上がると俺の隣にストンと腰をおろした。
「どうしても言いたくないんならいいけど」
「…………」
「吐き出した方がすっきりすることの方が、多いと思うけどな」
しばしの沈黙の後、抑揚の無い声でポツリと言った。
「俺さ…」
「何?」
「歌手になるっていう夢、諦めるかもしんない」
どうしてこんなことを言ったのか、自分でも分からない。
しかも会って間もない、どこの誰とも分からない名前しか知らない女の子に。
だけど言葉は、次から次へととめどなく溢れてきた。
まるでずっと出口を探し求めていたかのように―…。
沙雪は少し驚いた様子だったが、口を挟む事も無く俺の言葉をじっと聞いていた。
「何かさ…分かんなくなってきたんだ、最近。否定すんだよ、俺のやろうとしてることを周りが。俺の言葉なんて…聞いちゃ貰えなくて…」
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