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「それでも最初は何とかして解って貰おうと頑張ったんだ。だけどそのうち…分かんなくなってきた。何が正しくて何が間違ってるのか」
声を荒げて俺はしゃべり続けた。
「もしかしたら、周りが言うようにしといた方がいいのかもしれない…って!その方が俺にとっても正しいのかもしれない…って!」
俺はその話をしている間、ずっと今日の事も含め最近身の回りで起こっている憂鬱な出来事を思い返していた。
俺の夢を真っ向から否定する先生。
反対まではしていないものの、あまり良くは思っていない両親。
どうせ、子供の他愛もない夢だ。
どこかで見切りをつけるだろう…と、父が母に話しているのを聞いたことがある。
その時は、何か自分が間違いを犯しているような気分になったものだった。
もしかしたら、周囲の大人の言うとおりにしておいた方がいいのかもしれない。
夢なんて確かに、不確かで曖昧で、絶対叶うとは限らないし、後で後悔する事がないように、今のうちに諦めた方がいいのかもしれない。
そんな後ろ向きで悲観的な想いが、この所ずっと自分の心を支配していた。
俺のそんな、殆ど愚痴に近いような言葉を、黙って聞いていた沙雪だったが、じっと俺の目を見据えると、出し抜けにこう切り出した。
「私は」
「え?」
「これからもずっと聞きたいな。春樹君の歌」
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