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そう言って俺を見つめる沙雪の目は、今までに見たことが無い位に真剣で怖い位だ。
心まで見透かされる気がして、思わず俺は目を逸らした。
「そんな事言うの…お前位だ」
「目をそらさないで」
穏やかにそう言うと、沙雪は両手で俺の頬を挟むと、ゆっくりと自分の方に向けさせる。
「ねぇ、聞いて」
沙雪の美しく整った顔が目の前に広がる。
思わず俺は赤くなり、慌てて叫んだ。
「なっ…何すんだ…」
「聞いて!!」
「ハイ…」
有無を言わさない沙雪の迫力に一瞬たじろぐ。
こんなに真剣な沙雪を見るのはこれが初めてだった。
「“私は”何の意味もなく、ここに春樹君の歌を聴きに来てるんじゃないわ。それだけのパワーが春樹君の声には秘められているの」
そう言って、穏やかに微笑む沙雪。
「人ひとりの気持ちを揺り動かして行動に駆り立てることが出来るのよ。それって凄いパワーだと思わない?」
不思議と、さっきまで不安定に荒れ狂っていた混沌とした気持ちが、少し落ち着いて行くのが分かる。
それがどうしてかは…うまく説明できないけど。
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