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「周りの人がこう言うからーとか、こう思うからーとかそういうの考えるより、自分の思いのままに一回突き進んでみたいって思わない?」
「だ…だけどもし失敗したら?」
「失敗が無かったら成功は有り得ないじゃない」
そう言ってふっと笑う沙雪。
その時、ふっと両頬にあった沙雪の冷たい手の感触が無くなるのが分かった。
さっきまでこちらに向けられていた視線が前方に移動している。
前を見据えると、しっかりとした口調で沙雪は言った。
「私だったら、失敗した時のことなんか考えないなぁ。だって人って、失敗も挫折もあるから、成長出来るように頑張るでしょ?」
「……………」
「100%うまくいくことなんて無いのよ。そんなのよっぽど妥協するか諦めるかしなきゃ無理」
「だけど…妥協しなきゃいけない事があるのも、確かじゃないか…」
呻くように言うと、俺はまたパッと目を背けた。
分かっちゃいるんだ、分かっちゃいる。
沙雪が今言っていることが正しいこと位。
自分がこんなに弱い人間だったなんて―…。
「妥協したいの?春樹君は」
「え?」
不意をつくような沙雪の言葉。
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