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「そんなんじゃ、絶対夢なんて叶わないし確かに諦めた方がいいのかもね」
馬鹿にしたようにそう言うと沙雪は、俺に背を向け歩き出す。
その瞬間。
俺は考えるより先に立ち上がると、声を荒げ叫んでいた。
「俺は…夢に対して妥協した覚えなんて一度もない!!」
驚いて振り返る沙雪。
「今まで、オーディション受けたり、カラオケで何時間も練習したり…色々努力して来たんだ!!歌手になりたいっていう想いだったら…絶対誰にも負けない!!」
あ…。
きっとその時の俺は、さぞや不思議な顔をしていたに違いない。
こんな風に言い切る事のできる自分が、まだ自分の中に眠っていたなんて…。
今まで押し殺さねばならなかった夢に対する強い想いや情熱が、一気に溢れ出るのを感じた。
ずっと心の中を支配していた“迷い”や“不安”が一気に消えていくのが分かる。
「そうだ…大事なのは…“俺がどうしたいか”だ」
一番基本的な事なのに、今までずっと見失っていたことを、ポツンと呟いた。
知らないうちに周りに流されて、本当の事が見えなくなっていた。
どう回り道したって、最終的に行き着く答えは、自分が本当にやりたいことである筈なのに…。
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