3.変わっていく何か

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「そんなんじゃ、絶対夢なんて叶わないし確かに諦めた方がいいのかもね」 馬鹿にしたようにそう言うと沙雪は、俺に背を向け歩き出す。 その瞬間。 俺は考えるより先に立ち上がると、声を荒げ叫んでいた。 「俺は…夢に対して妥協した覚えなんて一度もない!!」 驚いて振り返る沙雪。 「今まで、オーディション受けたり、カラオケで何時間も練習したり…色々努力して来たんだ!!歌手になりたいっていう想いだったら…絶対誰にも負けない!!」 あ…。 きっとその時の俺は、さぞや不思議な顔をしていたに違いない。 こんな風に言い切る事のできる自分が、まだ自分の中に眠っていたなんて…。 今まで押し殺さねばならなかった夢に対する強い想いや情熱が、一気に溢れ出るのを感じた。 ずっと心の中を支配していた“迷い”や“不安”が一気に消えていくのが分かる。 「そうだ…大事なのは…“俺がどうしたいか”だ」 一番基本的な事なのに、今までずっと見失っていたことを、ポツンと呟いた。 知らないうちに周りに流されて、本当の事が見えなくなっていた。 どう回り道したって、最終的に行き着く答えは、自分が本当にやりたいことである筈なのに…。
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