3.変わっていく何か

9/9
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
そう出来ない現実に悩むのであれば、出来るように努力するしかないのだ。 ふと見上げると、沙雪が屈託の無い笑顔を浮かべ、こっちを見つめている。 「ほーらっ、答えが出たじゃん!!」 不適に笑いピースサインの沙雪。 無邪気なその仕草を見て、思わず吹き出す俺。 それを見て沙雪も笑う。2人でしばらくの間、ずっと笑いあっていた。 それを見た偶然通りかかった通行人達が、訝しげな表情を浮かべ通り過ぎて行く。 それすら気にせずに。 後々考えたのだが、ひょっとしたら沙雪は俺の性格を考えて、わざとこう仕向けたのではないかと思う。 俺が“自分で考えて”答えを出せるように…。 我ながら都合のいい解釈だとは思うのだけど。 だけど現に、俺の考えを180度変えてしまったのだ。 もっと知りたい、沙雪のことを。 沙雪にも、俺のことをもっと知って欲しい。 我ながら信じられないと思う。 この間失恋したばかりだというのに、また性懲りもなく恋に落ちるなんて…。 だけど、きっと初めて沙雪と出会った時から、気持ちは動き出していたのだ。 気付こうとしなかっただけで。 でなきゃ、あんな無茶な約束を守って、毎週毎週歌いに出掛けるなんて事、面倒臭がりな俺がする筈無かっただろうから。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!