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そう出来ない現実に悩むのであれば、出来るように努力するしかないのだ。
ふと見上げると、沙雪が屈託の無い笑顔を浮かべ、こっちを見つめている。
「ほーらっ、答えが出たじゃん!!」
不適に笑いピースサインの沙雪。
無邪気なその仕草を見て、思わず吹き出す俺。
それを見て沙雪も笑う。2人でしばらくの間、ずっと笑いあっていた。
それを見た偶然通りかかった通行人達が、訝しげな表情を浮かべ通り過ぎて行く。
それすら気にせずに。
後々考えたのだが、ひょっとしたら沙雪は俺の性格を考えて、わざとこう仕向けたのではないかと思う。
俺が“自分で考えて”答えを出せるように…。
我ながら都合のいい解釈だとは思うのだけど。
だけど現に、俺の考えを180度変えてしまったのだ。
もっと知りたい、沙雪のことを。
沙雪にも、俺のことをもっと知って欲しい。
我ながら信じられないと思う。
この間失恋したばかりだというのに、また性懲りもなく恋に落ちるなんて…。
だけど、きっと初めて沙雪と出会った時から、気持ちは動き出していたのだ。
気付こうとしなかっただけで。
でなきゃ、あんな無茶な約束を守って、毎週毎週歌いに出掛けるなんて事、面倒臭がりな俺がする筈無かっただろうから。
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