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「どうした、浮かない顔して」
教室に入ると、保田という俺の小学校からの親友が声をかけてきた。
「まだまどかちゃんのことで悩んでんのか?」
「違うよ、まどかは関係ない。進路のことで筒井に呼ばれてた。またいつもの説教だよ」
“まどか”というのは、俺がつい最近まで付き合っていた彼女の名前だ。
1ヶ月ほど前、他に好きな男が出来たと言い渡されたばかりだった。
まどかは俺を責めたりはしなかったが内心、音楽バカの俺に対し
もっと自分に感心をもってほしいという気持ちがあったのではないかと思う。
なんて今更振り返った所でどうにもならないのだが。
「あっ…そうだったのか。ワリぃ」
バツの悪そうな顔の保田。
「いーよ。未練が無いって言ったら嘘になるけど…。でもだいぶあいつの顔、普通に見れるようになってきたから」
「赤坂…」
「同じクラスってのはやっぱしでもキツいけどな」
笑いたくもないのにへへっと愛想笑いを浮かべた。
全く俺ってやつはどうしてこう、笑いたくない時に無理に笑おうとするんだろう。
「まぁそーゆうのは時間が解決してくれるからさ。とにかく辛かったら言えよ?」
俺の考えなんてお見通しだとばかりに、元気づけるようにそう言うと、保田は俺の肩を軽く叩いた。
「進路のことにしてもさ。教師なんて決まったことしか言わねーんだから気にすんな。やりたいようにやるのが一番だよ」
そう言って保田は俺を励まそうと、無理矢理作ったような笑顔を浮かべた。
何故だかやりきれなさが胸いっぱいに広がった。
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