【第一夜】

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誰も話さないバスの中、彼女の甘くかすれた声だけが響く。老人たちもみな一様に彼女の話に聞き入っている(ように見える)。 わたしは思うんだけど、 彼女が続ける。 そういうのってみんな、なんていうかな、ほら、誰かが指をパチッと(彼女は右手の指を鳴らしてみせる)するだけで全部変わってしまうような、気がしない?ほんの小さな小さなきっかけとかタイミングで、いろんなことは決められている、そんな気がするのね、うん。あなたはどう思う? そうね、とわたしは言う。
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