夢幾夜

【第一夜】

女の子。

落ち着いた茶色の髪の毛が、とにかくまっすぐに肩の下まですっとりと降りていて、みるからにさらさらとしていそうで、つい触ってみたくなる。
しゅっと細い眉の下には垂れ目といっていいぐらいの両目、瞳の色は髪と同じぐらいの明るさの茶色。鼻は少し大きめ。
でもその女の子の顔立ちの一番魅力的なパーツは薄いくちびるでつくられた大きな口だった。

黒いTシャツにカーキのパンツ、ホーキンスのごついブーツ。Tシャツから伸びた腕は、わたしには筋肉など必要ありませんから、と言っているかのように細く、胸は、『装飾等、一切の無駄を省き、機能性だけを純粋に追求しました。』という大きさだが、その小ぶりな胸が彼女の線の細い雰囲気によく似合う。黒い大きなリュックが彼女の膝の間にあった。

初めて見る女の子。
でも一目見て、なぜだかわたしはその子の笑顔を昔から知っているような気持ちになった。
目を細めて、その大きな口をにぱっと広げる、ひまわりみたいな笑顔を、知っている気がした。