【第一夜】

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上から不躾に見すぎたか、女の子が首を回してコキッと音を鳴らした時に目が合う。 こんにちは、と彼女は言う。 わたしも、こんにちは、と返す。 どこから来たの、 とわたしは聞いて、その時やっと自分の口から発している言葉が日本語ではないことに気づく。 バックパッカー? 彼女が言う。 そう、いろんなところを歩いている。リュック背負ってね。日本には昨日着いたんだ、人が多いよね。この街にはたまたま来たんだよ、ガイドブックにのってた。 そして笑う、いつかどこかで見たことのあるような笑顔で。 バスの中に今までなかった音声が加わり、なんにんかの老人たちがわたしたちの方をちらちらと見る。
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