【第一夜】

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そう、気に入ってもらえたらいいんだけど。 わたしは外国語の教科書の例文みたいな文章を口にする。 しかしただのベッドタウンであるこの街を観光しても、それほど興味をそそられるものはないということは、生まれてからずっとこの街にすんでいるわたしがよく知っている。 あなたはどこからきたの? 彼女が訊ねる。どちらかというと低い、タバコを吸うのだろう、少しかすれたその声はしかし、わたしの耳に心地よく響く。 わたしはこの街にすんでる。いいね、バックパック。楽しそう。 また彼女は微笑んで返す。 うん、楽しいよ。今はね。昔のこととか先のことはともかく、今は楽しい方がいい。
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