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「ちょっとー!あんた若いのにヒドいわよ!」
翌日、柚子の目の前に現れたイケメンは、柚子を見るなりオネエ言葉でそう言った。
「でしょ?」
「なんつーの?覇気がないのよ!お洒落に対する情熱がまったく感じられない!」
「でしょー?」
「なんなの!この古ぼけたワンピース!お嬢様はワンピース着とけばいいなんて考え古いわよっ!それにこのただ伸ばしてくくっただけの髪!ただ塗っただけの化粧!」
散々けなして最後に深々とため息をつく。
「自分に興味がなさすぎよ」
その的を得た台詞に柚子は思わずえへっと笑う。
「照れるとこじゃないわよ」
そして実也子に突っ込まれる。
「彼、昨日言ってた自称スタイリストの…」
「自称は余計よ!」
実也子の紹介を遮ってオネエ言葉のイケメンが柚子に手を差し出しにっこり笑う。
「スタイリストの柏木アキラ。よろしくね」
柚子は差し出された手をそっと握ると、アキラを真っすぐ見据えて微笑む。
「真崎柚子と申します。よろしくお願いします」
アキラは手を握ったまま柚子の頭の先からつま先まで舐めるように見ると不適な笑みを浮かべ、柚子から目を離さずに実也子に話し掛ける。
「面白いじゃない。さすがお嬢様なだけあって基本はできてる」
「でしょ?」
「あたしがビシバシ磨いてあげるから、覚悟しなさい」
不敵に笑うアキラと美也子に、柚子はただただ愛想笑いを浮かべるしかできなかった。
――こ…恐すぎる…。
「さてと」
アキラはやっと柚子の手を離すと実也子に向き直る。
「あなたこれから仕事でしょ?ユズは任せて」
「アキラに任せるわ!じゃ柚子。楽しみにしてるからね」
柚子が引き止める間もなく実也子は走り去って行った。
「ユズ」
「…はい!柏木さん」
「アキラよ!」
「…ア…キラ」
戸惑いながらもそう呼ぶと、アキラは満足そうに微笑んだ。
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