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その日は雲行きが怪しかった。物理的な意味ではない、比喩的な意味である。
湯呑が割れた、靴ひもが切れた、黒猫に横切られた、等々の基本は当然押さえていた。その上近所のスーパーまでの道程で変質者に5人も出会った。(普段は2人程度なのに)そのスーパーに強盗が押し入った。(普段は万引き犯とのゴタゴタに巻き込まれるだけなのに)
そして帰り道、三匹のDQNに絡まれている。(これは普段通りである)
この見事なまでに不幸な少年こそ我らが主人公、戌戌(いじゅつ) 幸人(ゆきと)、その人だ。
彼は所謂トラブル体質で、ひたすら周囲の厄介事に巻き込まれ、さらに二次災害的に厄介事を発生させることを特技(ブラックジョークである)としている。そのせいか、物事に対し常に斜めに構え、いつでも逃避避難できるように、という大分ひねたスタンスを取っている。
そして……いや、彼の人となりに関するディティールは、物語の中でおいおい明らかにして行くとして、ここではこれくらいに留めておこう。
とにかく、だ。彼は3人の不良に現在進行形で絡まれている。心境としては、めんどくさい、疲れた、やってらんない、といったところ。そこに焦りや怒りはない。悲しいが、慣れっこなのだ。
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