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もう直視するのも面倒なので、ややうつむき、目にかかりそうな長さまで伸びてきた前髪を、鬱陶しそうに摘まんでいた。あーあ、そろそろ切らねぇといけませんね、って。
「なあお兄ちゃん、聞いてっか?」
「だからちょーっとばかし俺らに金貸してくれりゃあいいんだわ」
「マ、返してやれっかは保証しねぇが。ギャハハハハ!」
そもそもこんな遅くならなければ良かった。どうやら強盗を踏み倒したのがいけなかったらしい。警察に散々取り調べられた挙句、ぺこぺこと謝罪謝礼されて。だったら早く帰して欲しかった、と内心で悶々。こんなことが(今日はとりわけひどかったが)毎日あれば鬱屈したものも溜まる。ひねた性格にもなる。仕方がない。
「オイ、お兄ちゃんいい加減にぽげら!?」
だから目の前で唾を飛ばしている男の股間のone thingを蹴り上げてしまったのも、きっと、仕方のない事である。
「テメェ何しやが――っ」
当然、男の仲間は激昂。2人の内の1人が咆える。が、今度も最後まで言い切ることが出来ない。
しかし今度は幸人少年の直接的な妨害ではない。
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