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原因は、少年の目。鬱陶しい前髪から覗いたそれ。
死んでいた。死んでいるようだった。
恐ろしいまでに、絶望的に、絶対的に、圧倒的に死んでいる彼の目。
光沢がなく、底がなく、焦点がなく、興味もなければ感情もない。
廃ビルの窓ガラスのようなそれは、死んだ魚の白濁した目の方がよっぽど生き生きと外界を映しているのではないか、と錯覚するほどに。その瞳は、死んでいた。
「何って……そんなのすぐに分かるでしょう?わざわざ僕に聞かねぇでくださいよ。自分で考えろ。思考しろ。状況を読め。判断ぐらい、猿でも下せますよ。きゃんきゃん五月蠅い貴方方は、さしずめ駄犬といったところですかね」
淡々と、ただ淡々と、雨垂れのようにぽつぽつと、幸人少年は言葉を紡ぐ。少年の呟きが雨垂れと違うのは、人体を硬直させかねない毒性を持っていることだ。
「ああ、『何しやがる』でしたっけ?いえ、もちろんそれが常套句で、質問を意図していないのは百も承知です。ただ、僕は優しいですから、ちゃんと答えてあげるますね」
何も映さない瞳に、怯える男達を映し、少年は続ける。
「何って、もう、面倒なのでぶっ潰します。それだけです」
無感動な声で伝えられるそれは、死刑宣告。
「――覚悟してくださいよ?」
無表情のまま、言い切った。
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