罰-ばつ-

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「君は二人殺して12年間逃げ回ったんだったね?」 一人の裁判官が俺に聞いた。 「そうです」 俺は潔く答えた。嘘をついたところで、どうにもならないからだ。 「それじゃ皆さん。刑の期間を決めましょう。普通は2人の殺人で、1週間から1ヶ月ぐらいですが、今回は12年間も逃げ回っている。それを踏まえてお答えいただきたい」 一人の裁判員が手を挙げ、発言する。 「12年間も逃げていたんですから、その中で少しは被告人も反省していると思われます。ですからどうでしょう?2日間というのは」 クソが。この刑に2日も1ヶ月も変わりはない。有るのは死だけだ。 彼女の発言に、誰も異論を唱えなかった。 裁判長はそれを把握し、口を開く。 「では、2日間で構いませんね?」 俺以外の全員が頷く。 「それでは判決を言い渡す。被告人は有罪。罪名は殺人。以上を理由に、今から被告人の“人権”を2日間、剥奪する。解散」 俺以外の奴等が部屋からでていく。沈黙を守る俺。汗がゆっくりと顎まで流れていき、俺の体の震えがそれを床へと落とした。 人権がない。それは死に等しい。通行人に殴られようと、銃で撃たれようと、誰も俺を助けてくれない。俺は人ではないのだから。
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