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二枚目
翌日、私の足は当然のようにあの店へと向かっていた。
もちろん、彼女に会うためである。
彼女は私と出会ったときから、まさに今まで私の心の中から消えてはくれなかった。
一瞬たりとも、寝ても覚めても、夢の中でさえ。
これは、他人からしてみればおかしなことなのかも知れない。
なにしろ私自身、たかが人形一体にこれほど魅せられてしまったということが、不思議でたまらないのだから。
それでも――。
店の前に昨日と同じ姿をみとめると、私の心は春の空のようにきらきらと晴れ渡った。
白くつやのある彼女の肌は、彼女に魅せられるのも無理はないのだと執拗に訴えかけ、きらめいてさえ見える彼女の双眸は、彼女のことを「たかが」とは言わせないほどの美しさを誇っているのであった。
私はあまりの愛おしさに目を細め、ガラス越しに微笑みかけていた。
彼女に反応はない。
彼女は人形なのだから。
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