六枚目

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六枚目

 こうして一週間ほどの期間が、彼女によって埋め尽くされた頃だろうか。  この頃、私の生活の中心はやはり彼女でしかありえなくて、わずらわしい諸事情によりどうしても彼女と一緒にいられないときは、次会ったときに彼女と話す内容ばかりを考えていた。  そんな私の想いが、やっと通じたのだろう。  彼女はとうとう、私に心を許しはじめたのである。  笑顔を見せたとき以外はずっと同じだった表情に、ほんのわずかではあるけれど変化が表れたのだ。  優しい顔になっている。  彼女の目つきが変わっている。  それこそ、前日の写真と比べてみなければ分かるはずもないであろう小さな変化ではあるけれど、幸いにも私の目には、従来までの彼女の姿が克明に焼きつけられていた。  私は嬉しさのあまり、絶叫しそうになった。  それでもすぐに、喜ぶのはまだ早い、と思い留まる。  私は彼女を手に入れるための、たった一歩目を踏みだしただけではないか。  その日私は散々に彼女と見つめあうと、素晴らしい未来を約束して家路についた。  これが、私が彼女と過ごした最後の時間になる。
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