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「お、おい、風峰。どうしたんだよ……、お前らしくないぞ」
淳とナリシアが戸惑うような視線を俺に向ける。
「そ、そうよ。こんなの初めてじゃない。どうしたの?」
二人して言葉は困惑するように震えているが、それをどうこう言える立場に俺はいない。
俺は生まれて初めて――真剣な頼みごとをしているのだから。
二人は帰ってきて、いきなり無言で頭を下げる俺に驚いているのだ。
頭を下げながら俺は言う。
「……カレンが連れ去られた」
その短い文は、しかし言葉にするには、あまりにも難しく、辛い。
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