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「それがスタールビーね?」
隠れ家の室内に、女の声が落ちる。建物の外見からは予想もできない広さを誇る一室は、地下にその敷地を広げていた。
そんな部屋にいる三人の内、言葉を発したのはナリシア。金糸で編んだような見事な長髪を背中に流し、備え付けられた家具に背中を預けている。
彼女の紫の瞳が俺の手元の指輪へと視線を投げる。
「ああ」
俺はナシリアの言葉に短く答えると、肯首した。俺は近づけたスタールビーの底知れぬ朱の深淵をそっと覗きこむ。
透き通る宝石の純度だけではない。台座に至るまでが、一種の芸術品だ。華美な装飾はルビーの魅力を失わせるほどにはなく、調和するような美を備えていた。
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