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依頼完遂後の弛緩した空気。淳は狙っていないのだろうが、その雰囲気に持ち込む気配りがしっかりとしている。
やっぱり仲間の需要は高いな、と結論付けて俺は目を閉じる。
俺の胸に掴まって、まぶたを下すカレンへの気配りはもう必要ない。
声をかけて離させるのも億劫だったので、そのままにした。
俺はつくづく以下省略だ。繰り返すのは蛇足というものだ。
「ねぇ?」
俺の顔に吐息がかかり、少女の紅の瞳に見つめられる。手は自然と俺の胸から離れていた。こいつも気の配達の達人か。
しかし俺ほどひどい人間もないのに、俺を話相手に選ぶとはみんな見る目がない。
それでも突然発生したこの状況で、落ち着いた声を出せる彼女になんとなく敬意を表して、聞き流すことにした。
「あなた――お酒臭い」
仮にも、いや仮でもないが命の恩人たる俺に対する発言か。俺よりもひどいやつもいるのかもしれないと、ほっとする今日この頃。
後日談としては人間観察力の特訓が開始されたとか、されてないとか。
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