エレベーター

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 蝉が鳴く音が聞こえる住宅街の夜空の下俺は自分の家を目指して、しっかりとした足取りで歩いている。  友達と一緒に酒を買って飲んで現在時刻は夜の0時過ぎ。 住宅街とは言え、0時過ぎているからか辺りは静まり返っている。   そんな中に不自然に立っている1つの8階建ての灰色のマンション。 その5階が俺の住んでる所だ。 夏と言うこともあり、俺は背広にノーネクタイと言う格好でマンションの玄関を潜った。  俺は腕にしている銀色の腕時計をチラリと見る。 光の加減か銀色の腕時計の枠に俺の顔が良い感じで映っている。 「12時過ぎか……」  と俺は呟く。 玄関を潜って正面には明かりの点いたエレベーター、その右手には薄暗い階段が上へとまるで俺を闇へと誘ってるんじゃないか?と思わせる。  普通なら皆迷う事無く、エレベーターを選ぶだろう。 もしここで階段を選ぶ人が居るとしたら、ダイエットをしてる人か普段から階段を使う事にしてる人位だと思う。  だが俺は迷っていた。 何故ならこのマンションにはある一定の条件を満たすと幽霊が出ると言われてるからだ。 その条件は夜の0時過ぎ~朝の4時までにエレベーターに乗る事。  最初は俺も馬鹿らしい話だと思っていたのだが、同じマンションに住む人達があの時間は絶対にやめた方が良いと言っていたので、今まで極力避けてきたのだ。  その日は酒を飲んでいたという事もあって、俺は強気になったのかもしれない。 幽霊なんて出る訳がないだろう。 そんなどこからか分からないが湧き出てくる自信に身を任せて俺はゆっくりとエレベーターの上ボタンを押した。  3階にあったエレベーターがゆっくりと音を立てて俺の居る1階下りてきた。 そしてゆっくりと扉が開く。 扉の部分は窓の様に一部ガラスに成っていて個人的にはおしゃれだと思う。 エレベーターの中は灰色のカーペットの様な物で、エレベーター壁の部分を覆っている。
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