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俺はゆっくりとエレベーターの中へと足を踏み入れた。
踏み入れると同時に少しエレベーターが沈む。
そんな太ってる訳じゃないが、乗った時に若干沈む、この感覚に俺は少しびびった。
幽霊が出ると聞いていたからだろうか?普段ならびびる理由もない。
「全く俺は……何をびびってるんだよ」
そう自分を励ましながら、5階のボタンを押すためにボタンの並んでるはずの場所を見た。
「あ、あれ?」
そこには普段見た事のない9階のボタンがまるで当たり前の様に増えていた。
俺はびっくりして、5階を押す手が止まる。
マンションを間違えたか?一瞬そんな事を考えたが、間違えるはずがない。
この辺にはこのマンション以外建ってないのだから。
スーっと自分の中で音を立てて酔いが醒めていく。
やばい……そう思った時、エレベータの扉が自動的に閉まり始めた。
俺は慌てて降りようとした。
「う、動けない!?」
俺は足を前に進ませて出ようとするのだが、まるで足が縫いつけられた様に出る事ができなかった。
無情にもしまるエレベーターの扉。
とりあえず早く5階を押してしまおう、パニックに陥いりながらも、俺は震える手で5階を押そうとした。
5階のボタンまで後3cmという所で目の端に映るエレベーターの窓ガラスに、黒い帽子を深く被った人が俺の後ろに立っている姿がチラリと映り、俺は慌てて振り返る。
だけど、そこには誰も居ない。
俺は体中から冷や汗が湧き出てくる。
幽霊が出る。
本当だった……そう思いながら俺は慌てて5階のボタンを連打した。
古いタイプのエレベーターなので押した階がキャンセルされる等と言う事はない。
俺は怖くなり、5階を押した時にひかるランプを確認してから目を瞑った……
『ねぇ?遊ぼう?』
耳元でそんな冷たい声が聞こえて来た。
それと同時に上へと上がり始めるエレベーター。
俺は恐怖で少し身震いをした。
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