秘密の恋人

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「亜由美ちゃん、発表会は出られるよね」 「大丈夫だよ」 「じゃぁこれをお母さんに渡してね」 私は亜由美ちゃんに発表会の申し込み用紙を渡した。 「それじゃ今日から発表会の練習を始めましょうね。 何が弾きたい?」 亜由美ちゃんはしばらく考えてからこう答えた。 「エリーゼが弾きたい」 「エリーゼ?」 「うん、亜由美エリーゼを弾くのが夢なの」 「分かったわじゃぁエリーゼにしましょうね」 こうして亜由美ちゃんの発表会に向けての練習が始まった。 発表会は半年後、私のクラスからは亜由美ちゃんと恵里佳ちゃんの2人に絞り安全策で代表にした。 他にも優秀な生徒はいるが、その中でも飛び抜けて優れてるのがこの2人なのだ。 亜由美ちゃんのレッスンが終わり、数時間後、恵里佳ちゃんがレッスンに来た。 私は亜由美ちゃんと同じ様に発表会の申し込み用紙を渡し、曲を選ばせ恵里佳ちゃんはChopin作曲幻想即興曲に決まった。 今日の業務は終わり、私は帰宅する支度を始めた。 携帯には裕二からメールが入っている。 『香織へ 今日はロケが早く終わったから、香織の部屋で待ってる』 そう裕二の部屋よりも私の部屋は少しだけ広いと言っても、ワンルームだしリビングには大きなグランドピアノが中央にドカンと置いてある。 だから裕二の部屋の方が広く見える。 「裕ちゃん…… 家に来るんだ」 昨日のうちに部屋は片付けてあるけど、ピアノの上に楽譜が置いたままだ…… 裕二は私のピアノにはいじらないから安心だけど、怒られちゃいそう…… 私は深いため息をついて自宅に戻った。 自宅に着くと窓から明かりがこぼれている。 「裕ちゃん来てるんだ」 私は慌てて部屋に向かった。 「ただいま」 「おかえり香織」 「裕ちゃん遅くなってごめんね…… 今、夕食作るから」
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