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「あ、あの……」
息を切らせながら商人に話し掛ける桃花に、商人は「おや、先ほどのお嬢さんですか」とにっこり笑い会釈する。
「あの、私を犀都に連れて行って下さい!!」
「えっ……?」
桃花の思いつめた顔で頼まれ、商人のおじさんは驚く顔を見せた。
「私、犀都に行って、稼ぎたいんです!!」
頭を下げる桃花に、商人のおじさんは、困った顔を見せながらも、真実を突き付ける。
「お嬢さん、悪い事は言わない。辞めときな」
「どうして……」
「どうしても何も、貴女には教養がないでしょ?犀都に住むのは、大半が貴族や王族、それに大商人達ってところです。犀都の隣の黎<レイ>にでも行けば、普通の民間がありますが…犀都に行った所で、教養のないお嬢さんでは、馬鹿にされて門前払いですよ」
商人の話は最もだと桃花は思う。
しかし、ここで諦めたら、きっと次はない…やるだけ、やってみなければわらない。
桃花は手をギュッと握りしめ、頭を下げる。
「それでも良いんです!!お願いします。この機会を逃したくないんです!!どうか、犀都に連れて行って下さい!!お願いします!!」
必死に頭を下げる桃花に、商人はやれやれと言った声で、「商人に無料で連れてけなんて頼むのは、お嬢さんくらいですよ」と呆れた顔をする。
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