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「す、すみません…お金が…なくて…」
申し訳なさそうな顔をする桃花に、商人はハァっとため息を吐く。
「知ってるよ。金がないから、犀都で出稼ぎしたいのでしょ?」
「はい……」
「わかったよ。犀都まで連れて行って差し上げます」
「ほ、本当ですか!!」
商人の言葉に、桃花の顔はパッと明るくなる。
これでやっと犀都に行ける…道が開けたと喜びに満ちる。
「ただし、タダでなんて以ての外…犀都に着いたら、運賃代として荷車の荷物運びを手伝って貰いますから」
「はい、それくらいお安い御用です!!ありがとうございます!!」
商人の提案を桃花は快く引き受ける。
荷車の荷物運びくらいで済むならば、お釣りがくるくらいだとも思う。
こうして、桃花は商人の車に乗せてもらい自分の故郷を後にする。
この時の桃花は、自分自身に何が起こるかなど知らなかった。
犀都に行く事が、桃花自身に沢山の壁が立ちはだかっていることなど…
期待に満ち溢れ、犀都に希望さえ感じる桃花には知る余地もなし。
そして…これからが、この物語の始まりだった……
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