犀都と青年

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  犀都に来るまでに半月はかかった。 母達に渡したお金では、ひと月も保たないだろうと、少し焦りを感じる桃花。 どうやって探すかわからず、一つ一つに声を掛けて見る事にする。 「犀都って広いもの…お店も沢山あるし、きっと一軒くらい見つかるわ」 そう信じて、桃花は街の中を歩き出し、目に付いたお店へと入る。 見た感じ食堂らしい。 「はい、いらっしゃ……何か御用?」 にこやかに笑い掛ける店の女性だったが、桃花の顔を見た瞬間に態度が変わる。 それに、疑問を抱きつつ、桃花は女性を真っ直ぐ見つめた。 「あの、私をここで働かせて下さい!!私、働き口を探しているんです!!」 「働く?馬鹿言わないで…貴女、文字の読み書きが出来るの?算術は?作法は?その身なりでは、無理がありそうだけれど」 人を小馬鹿にしたような目で見つめる女性に、桃花は自分の身なりを見てみる。 目の前の女性の身なりと、自分の身なりでは雲泥の差。 美しい身なりとは逆に、桃花の服は、接ぎ当てや切れた部分を縫い合わせるなどしてある。 しかし、服などあまり持っていない桃花にとっては仕方ないことだ。 「身なりはどうであれ、算術や読み書きは少しくらいなら出来ます」 「馬鹿言わないでちょうだい。身なりは品位を表すの。従業員の身なりが悪ければ、店の格が落ちるでしょ!!」 厳しい声を上げる女性に、桃花は困惑を見せる。  
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