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突き飛ばされ、そのまま地面に手を付くと、そこは擦りむき、手からは血がにじみ出る。
桃花は泣きたくなるのを堪えながら、次の店へと足を運ぶ。
「絶対に…負けないんだから…」
そう呟いて、店を回るが結局は「教養がない」「田舎者」「品が下がる」などと言われ追い出され、遂には、取り合ってもくれなく気付けば、昼を過ぎていた。
街並みを歩くだけで、すれ違う人達からじろじろと冷たい視線を感じる。
(お腹空いた…)
空腹感を覚える腹部を押さえながら、歩いていると、身なりの良い中年の男が声を掛けて来た。
「お嬢さん…もしや、職をお探しでは御座いませんか?」
「え?」
にこやか微笑む中年男性は、今まで接してきた犀都の人々とは違い、桃花を蔑む目をしていなかった。
「何でそれを?」
「先ほど、店先で見かけましたので…もしかしたらと思いまして、お声をお掛けしました」
中年男性の言葉に、なるほどと納得し、桃花はもしかしたら働き口があるかもと、真っ直ぐと男性を見つめる。
「はい、働き口を探しているんです!!」
「そうでしたか!!それは良かった。ちょうど、貴女みたいな可愛らしい女性で、働き口を探している方を探していたのです!!」
「ほ、本当ですか!?」
中年男性の言葉に、桃花は歓喜な声を上げる。
これぞまさしく、天の助けだろうかとも桃花は思った。
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