犀都と青年

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  「えぇ、住み込みで食事付き…しかも、高収入ですよ」 「住み込み…食事も…しかも、高収入!?ぜ、是非、働かせて下さい!!私、お金が必死なんです!!」 「本当ですか?では、案内しますから、付いて来て下さい」 男性は心底嬉しそうに微笑み、桃花もやっと働き口が見つかり、しかも、良い条件で安堵感を覚え、男性の後に続いた。 人並みをすり抜けるようにして、家と家の間の道を通って行くと、急に色艶やかな屋敷に色鮮やかな提灯<チョウチン>が飾られ並んでいる。 しかし、おかしな事に昼間だと言うのに、人がいないのだ…こんなに広い道なのに。 「あの、昼間だと言うのに、人が見当たらないのですが…」 「えぇ、夜の仕事ですから、皆さん、寝ていらっしゃるのですよ」 「そうなのですか…(夜かぁ…食堂かな?)」 周りをきょろきょろと見渡しながら、大きな屋敷へと案内される。 その屋敷の迫力に、桃花は驚き口を開いたままだった。 「お嬢さん如何されました?さ、中へどうぞ…」 「は、はい!!」 せっかくの雇ってくれるお店なのだ、今度こそ断られないようにしなければと、意気込みながら男性に続いて、屋敷へと入った。 「おーい、新人を連れてきたぞ!!」 「おや、新しい子かい?なかなか、可愛らしい子だね」 中年男性が店の奥へと声を掛けると、四十代くらいの化粧品の濃いおばさんがやって来て、品定めをするかのように桃花を見て来る。  
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