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「貴女は可愛らしい方です」
「えっ///」
端正な顔立ちの青年の急な言葉に、どきりと胸が高鳴る桃花。
「ですから、花街でもきっと大金を掴めますよ…太夫になれる要素があると私は思いますが…失礼ですが、お年は?」
「はい、十四歳です」
結局、引き留められるのではなく、背中を押されてしまった。
要するに、目の前の青年も遠回しがちに、犀都で普通に働くのは無理だと言っているのだろう。
(流石に、このまま家に帰れない…大口叩いて出て来てしまったのだし……)
桃花は一度目を閉じて、そして、心の中の意を決めて、瞼を上げて目の前の青年に微笑みかけた。
「私、やっぱり先ほどのお店に戻ります。家族の為にお金が必要ですし、もう、働ける場所が此処にしかないよです。せっかく、助けて頂いたのにすみません。では、失礼します」
頭を下げてそのまま去る桃花に、青年は桃花に手を伸ばし引き留める。
手を引かれた感触に、力仕事をしている人が出来る豆がある事がわかり、振り向きながらも、この人も苦労しているのだろうと感じる桃花。
「お待ちなさい。怖くは……ないのですか?」
「怖くは…」
怖くはあった。
田舎に花街など存在しない…そんな未知なる世界に足を踏み入れるのだから…
しかし、決めたのだ家族のために…
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