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「私と同じ境遇である同士の方が居るのですから、きっと、やって行けると思います」
そう言って踵を返そうとする桃花を青年はもう一度引き留める。
「待ちなさい。気が変わりました…」
「えっ?」
引き留められた腕を強く引かれ、青年はそのまま、桃花達が来た方向を戻るかのように歩き出し、桃花は戸惑いながら青年の後ろを付いて歩く。
「あ、あの……」
「気が変わった…十四の娘を花街に放り込むなど出来ないし、貴女には芯がある。気に入りましたよ…」
「あ、ありがとう御座います…」
褒められた事に驚きながら、青年と桃花は花街を抜けて、最初に来た場所に戻る。
そして、彼は迷う事なく、新しい道へと桃花を連れて行くのだ。
「私の名前は、柳 煌雷<リュウ コウライ>と言います。貴女の名前は?」
「蘇 桃花<ソ トウカ>です」
「とうか…良い名ですね。私の事は、煌雷と呼んで下さい」
「は、はい…煌雷様」
気付けば先ほどとは、桁違いに広い外壁が広がっている事に驚き、桃花は足を止める。
後ろが止まった事で、煌雷も足を止めて、桃花に微笑みかける。
「先ほどとは打って変わってるでしょ?」
「は、はい…此処はいったい…」
「ここは、貴族の特に王族と血が繋がっている家のみが建てられる地区です」
「お…王族とですか…!?」
驚く桃花に、予想通りの反応だと言う顔をする煌雷は、軽く頷き、一点を指差した。
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