1829人が本棚に入れています
本棚に追加
/464ページ
「けちでけっこう」
優しい笑みを浮かべると、男が前を指差す。
「レグリアが、咲いています」
「レグリア?」
男が立ち止まった足元には、形が壺状で六弁の白い花が咲いていた。一輪だけ咲くレグリアは、風にゆらゆらと揺れている。
「レグリアは草原にしか咲かない花で、花言葉は喜びです」
「ふうん」
興味がないのか、少年の態度は素っ気なかった。
片膝をついた男は、レグリアを根元から摘み取った。容貌が美しい彼が花を持つ姿は絵になっていた。もしここに女性がいたら、顔を赤くして見惚れていたに違いない。
男は赤色の目を閉じて開くと、呪文を唱える。
「永久を与える神、トラウムよ。この花に、朽ちることのない維持を与えたまえ」
最初のコメントを投稿しよう!