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「ほお、余の固定魔術をといたか」
「感心されても嬉しくありませんね。まさか簡単な固定魔術で、呪文を唱えさせられる羽目になるとは思いませんでした。そんなことより、私はあなたの正体を知りたいんですけど」
「ただの人間と答えておこうか」
ガウンが肩を小刻みに動かして失笑する。
「失礼、ついおかしくて笑っちゃいました。ただの人間にしては、妙な魔力をあなたは持ってるようですね。まるで、人間ではない悪魔のような魔力をね」
「怜悧なことはいいことだ。だが、そのかしこさが、時に己の身を滅ぼすことになると覚えておくといい」
ラシアスの紫色の双眸が、赤みを帯びて赤紫色に変わった。その目は魅惑的でありながら、恐れを抱かせる。彼の髪は風が吹いていないのに、重力を無視してなびいていた。
威圧的なのに見入ってしまうラシアスの存在に、フーガは圧倒されていた。これが人の姿をしていて、人ではない存在なのか。
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